歯周病治療
歯周病とは、歯を支えている周囲の組織(歯肉・骨)の病気です。
日ごろのお口のクリーニング・ケアが不充分だと、細菌が増殖して歯肉に炎症が起こり、やがて歯を支える骨が溶けていきます。
歯周病の恐さ
歯周病は痛みをほとんど伴うことなく進行する恐ろしい病気です。
その為、成人の80%が歯周病だと言われています。
さらに、歯周病は歯を失う原因の約40%を占めている為、気づかぬうちに歯を失う可能性が高いのです。
歯周病による合併症
歯周病はそれ自体の症状も恐ろしい病気ですが、
合併症を併発しやすいという医学的データがあります。
下記が医学的に証明されている主な歯周病の合併症の一例です。
- ●糖尿病
- 糖尿病の推定患者数は約700万人(日本糖尿病学会調べ,2005)と言われていますが、「糖尿病」には症・神経障害・末梢血管障害・大血管障 害などの合併症があり、歯周病はこれらに続く第6の合併症と捉えられています。 そのため糖尿病患者さんの多くに重度の歯周炎が見られます。また、歯周病の 炎症の場で産生されるサイトカインのうち、ある種のものが血糖値を低下させる作用を持つインスリンの効きを阻害する(インスリン抵抗性)ため、歯周 病患者 は血糖コントロールが改善しにくくなる。したがって、歯周病治療を行うことで炎症が収まり、また、糖尿病を罹患している歯周病治療において、糖尿病のコントロールなくして歯周病の治療も望めない。サイトカイン濃度が低下すれば血糖コントロールの改善に影響を 与えると考えられています。
- ●誤嚥性肺炎
- 気管に入った唾液中の細菌などが肺に感染して起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」。高齢者に多く見られる病気の一つです。
特に、要介護の高齢者などは飲み込む力や咳反射が低下しているため、唾液やプラークなどが気管に入りやすく誤嚥を起こします。
そのように入り込んだ歯周病原性細菌などのお口の中の細菌が肺炎を起こしやすくすると考えられています。
実際、この病気の多くの患者さんから歯周病原性細菌が見つかっているのです。そのため、高齢者に口腔ケアを行い、 歯周病原性細菌等の口内細菌が減少すると肺炎の発症率が下がることが報告されています。 - ●冠状動脈性心疾患
- 心臓に血液を供給する冠状動脈で血液の流れが悪くなり、心臓に障害が起こる病気の総称を「冠状動脈性心疾患」と呼びます。中でも、心筋梗塞や狭心症の虚血 性心疾患は、心臓の冠状動脈にアテローム性プラーク(血管沈着物)が形成 され閉塞されていくことで生じる病気です。血管内に侵入した歯周病原性細菌やその 病原因子などが、血流に乗って冠状動脈に達するとアテローム形成が加速化。その結果、心血管の病気が発症しやすくなります。歯周病に罹患していると、心血 管疾患の発症リスクは1.15~1.24倍高まると言われています。
- ●骨粗しょう症
- 骨量が減少して海綿状になり、もろく折れやすくなった状態が「骨粗しょう症」。高齢の女性に多く見られる病気として知られています。まだ充分に解明はされ ていませんが、歯周病になった歯肉で産生されるサイトカインには、骨代謝 に影響を及ぼすものがあり、歯の喪失と骨密度の減少には関連があるという研究報告 があります。逆に、骨粗しょう症の人が歯周病に罹患すると、歯周組織の歯槽骨が急速に吸収されることで症状が進行しやすくなる可能性が知られています。
- ●早産・低体重児出産
- 女性と歯周病との関係で注目すべきが「早産・低体重児出産」です。妊娠中はホルモンの変化などによって歯肉の炎症が起こりやすくなり、歯周病になる人も 少なくありません。これが「早産・低体重児出産」の危険度を高めているので す。歯肉の血管から侵入した歯周病原性細菌やサイトカインが血流に乗って子宮に 達すると、子宮筋の収縮を引き起こして早産や低体重児出産になる可能性があります。最近の報告によると、歯周病にかかった妊婦さんに低体重児出産が起きる リスクは健常者の4.3倍程度と言われているのです。
- ●歯垢中の細菌数
- 歯についている歯垢の中に細菌数をご存知でしょうか。1g中に総数で1~3兆個もの細菌が存在しています。
細菌の種類だけでも300~400種類と言われています。そのため治療・予防が必要となるのです。
歯周病の原因
歯周病は歯周原因菌による細菌感染症によって起こります。
いろいろな細菌が集まって歯に付着したものがプラークです。
このプラークを除去して病気が進行しないようにすること、これがプラークコントロールです。
毎日正しく、ご自分でケアを行うこと(セルフケア)と定期的なプロによる清掃(プロケア)を両立させることが予防のカギとなります。
歯周病予防
患者さんによる毎日のブラッシング(セルフケア)はもちろん、定期的に歯科医院に通われることをお勧め致します。
どんなに丁寧に歯みがきをしても、歯周歯周ポケット内の細菌は通常のブラッシングでは落ちません。
定期的(3~4か月)に歯科院に通い、プロの衛生士の手によってメインテナンス(プロケア)を行い、歯周病や虫歯予防に努めましょう。
健康な状態の歯とは
歯は骨によって支えられています。骨は歯肉で覆われているので、見た目には歯と歯肉しか見えません。
そして、歯と歯肉の間には溝(歯肉溝)があります。その深さはお口の中の健康を診るうえで、大変重要なものになってきます。
健康な状態ならば、溝の深さは3ミリ以内が目安となります。
- ●歯冠
- エナメル質という非常に固いもので覆われている歯の頭の部分。透明な白色をしている。
- ●歯肉
- 骨を覆っているお肉の部分。一般的には歯茎ともいわれ、正常な時は、ピンク色をしている。
- ●歯根
- 歯の根の部分。うすい黄色をしている。
- ●骨
- 歯槽骨と呼ばれ、歯を支えている一番大事な部分。
歯周病の進行段階
- ●P1
-
歯肉が赤く腫れ、ブラッシング時に出血しやすくなります。
歯の表面がザラザラした感じになります。 - ●P2
-
歯肉の腫れは強くなり、ちょっとした刺激で出血するようになります。
歯肉の溝が深くなり、血の中に膿が混じりはじめます。口臭が発生し、口の中がネバネバした感じになります。 - ●P3
-
歯肉の腫れはより強くなり、広範囲になります。
さらに知覚過敏などの症状が起き、歯に少しずつ揺れが出てきます。
咬み合わせたときに痛み、違和感が出てきます。
歯の支えが弱くなり、歯並びが乱れた際に長期間放置すると、強い口臭が発生し、社会生活に支障をきたす場合もあります。 - ●P4
-
歯を支える骨の大部分が失われ、咬む度に大きく揺れるようになります。
食事のときも歯ごたえのあるものは思い通りに咬めなくなります。
歯肉に膿が多量に溜まり腫れが顕著になります。
放置すると顎の骨が溶けて、骨粗しょう症、誤嚥性肺炎、冠状動脈性心疾患などの重篤な病気の原因になります。
歯周基本治療
歯周病の進行の程度にかかわらず、初めに行われるべき治療が歯周基本治療です。
原因である歯垢の除去および歯石の除去、歯の根の面の滑択化、ぐらぐらする歯の咬み合わせの調整・固定、予後不良歯の抜歯などです。
歯垢の除去をプラークコントロールといい、そのほとんどはご自宅でのセルフケアとなります。 場合によっては、歯科医院で器械的にPMTCを行うこともあります。
スケーリングとは歯の表面や根の表面の歯垢・歯石を機器を用いて取除く事です。
ルートプレーニングはスケーリングで取りきれなかった歯の表面のざらざらや、歯石で満たされていたり、
毒素や微生物で汚染された表層を除去する方法で、多くの場合スケーリングと同時に行います。
また、歯周病の進行に伴い歯は揺れてきますが、揺れている歯で噛むとさらに負担が増すため、その負担を軽くするために歯を削るなどして咬み合わせの調整を行います。
それでもぐらぐらして噛みづらい場合は歯科用の接着剤で隣の歯と接着し、ぐらぐらを抑えていきます。
時には歯科用接着剤で固定し揺れを抑えます。
歯周外科治療
基本治療で一部歯周歯周ポケットの深さが改善されず、歯周ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病の進行が進んでしまった状態に対して外科的に対応が必要になります。
また、特殊な材料を用いて部分的に失われた骨を再生させる手術(再生療法)を行う場合もあります。
手術はそれぞれの病態にあった方法が適応されます。
歯周ポケットが改善されればメインテナンスに移行できます。
こんな方は要注意
- 歯肉が赤く腫れている
- 歯肉がしみる
- 歯肉から膿が出て痛い
- 歯肉が痛い
- 歯ブラシをすると歯肉から血が出る
- なんだか歯が長くなったような気がする
- 歯肉が下がった
- 被せものの根本が黒い
- 歯の色が気になる。
- 歯がグラグラする
- 入れ歯を作ったが使っていない、合わない。
- 意識をしないと口が開いてしまう。
- 物がよく詰まる
- 歯を抜いたまま放置している
- 最近口臭がきつくなった
- 咬み合わせがおかしい。
- あごが痛い、だるい。
- 口が開きにくい。
- 開け閉めをすると音がする
- 糖尿病である。
- 骨粗鬆症である。
- たばこを吸っている